(根)抵当権抹消② 様々な事例の(根)抵当権の一括抹消の可否

不動産登記/備忘録
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大田区池上の司法書士事務所 ノア法務司法書士事務所 遠藤です。

今回は根抵当権、抵当権での一括抹消の可否についての様々な事例を紹介。

一括申請について

一括抹消できるかどうか、すなわち、抵当権、根抵当権の抹消は一括申請できるかという事ですので、
まずは、一括申請についてご説明します。

登記申請は原則1個の不動産、1個の登記すべき事件(取引・事象)ごとに各別の登記申請情報を作成する必要があります。

例えば、甲不動産、乙不動産がある場合、不動産所有者がAさん、買主がBさんの場合
上記原則通りですと 一つの申請で甲不動産について売主Aさん買主Bさんの所有権移転の申請書を作り
もう一つの申請書で乙不動産について売主Aさん買主Bさんの所有権移転の申請書を作るという事になるかと思います。

しかし、これですと、あまりにも不合理、不経済と言える。

そこで、数件の事件(取引・事象)や、数個の不動産につき、

一つの申請書でひとまとめに登記申請をする事が認められています

これを一括申請と言います。

一括申請要件

一括申請の要件として原則的に次の要件が必要ですが、(不動産登記令4条但書、不動産登記規則35条)ただ、先例等で要件がだいぶ緩和されております。

①管轄が同一  例えば甲不動産が東京にあって、乙不動産が千葉の場合、申請書を提出する法務局が違いますので、この場合は一括申請が出来ません。

②目的が同一 例えば、甲不動産は保存登記、乙不動産が移転登記の場合などは登記の目的が違いますので、一括申請出来ません。

③登記原因及びその日付が同一である事 登記の原因が贈与と売買などの場合は一括申請出来ませんし、
例えば、売買でも日付が違う場合は一括申請出来ません。

④当事者が同一である事 
甲不動産がBさん 乙不動産をCさんが所有している場合など 基本的に一括申請出来ません。

目的、原因、管轄、当事者っていう風に受験で暗記しますね。

一括抹消について

では、抵当権、根抵当権において、どのような時に一括申請での抹消、いわゆる一括抹消ができるかについてですが。


※事例は主に抵当権についてですが、根抵当権においても基本的に同じです。

(1)不動産複数の場合の一括抹消

例えば、抵当権者、設定者が同じである一つの抵当権が建物と土地についている場合(共同抵当権)など、この抵当権は一括抹消できます。
不動産が何個ありましても、一括して抹消出来ます。

尚、この場合の申請について 「共同抵当権抹消」「共同根抵当権抹消」
などの「共同」の文言は不要です。

(2)抵当権者が異なる場合の一括抹消

この場合は当事者が異なると言え、一括抹消は出来ません。例外もありません。

(3)設定者・不動産所有者が異なる場合の一括抹消

この場合当事者が異なると言えますが、一括抹消ができます。(不動産登記令4条但書、不動産登記規則35条10号)

設定者が異なる不動産についてる同一の債権を担保している抵当権、根抵当権は一括抹消可能

この場合の申請書は以下のように二人が権利者として申請します。

目的 抵当権抹消
原因 令和2年〇月〇日解除(弁済)
抹消すべき登記 平成〇年受付第○○号
権利者 東京都○○A
東京都○○B
義務者 銀行
添付書類○○
登録免許税 金2000円
不動産 土地 所在~
建物 家屋番号~

(4)債権が異なる場合の一括抹消(複数の抵当権の一括抹消)

このように、Aさんが2回に分けて銀行から借りたような場合、

債権が異なる二つの抵当権も例外的に一括で抹消できます

抵当権者が同一であれば「担保する債権が異なる」抵当権である場合であっても、同一申請書による一括申請が可能(登研401号)

同じ抵当権者の抵当権が1番および2番で設定されているようなときでも、抹消原因及び日付が同一であれば同一申請書による一括申請が可能という事です。

言い換えれば、別々の銀行の場合や、完済した日が違う場合は一括抹消は出来ません。

この場合の申請書は

目的 抵当権抹消
原因 令和2年〇月〇日解除(弁済)
抹消すべき登記 平成20年受付第○○号
        令和1年受付第○○号
        
権利者 東京都○○A
義務者 銀行
添付書類○○
登録免許税 金2000円(※登録免許税は抵当権の個数では無く、不動産の個数)
不動産 土地 所在~
建物 家屋番号~

一括抹消その他 事例

(1)一つの不動産は単独、もう一つは共有の場合の一括抹消

上の男性Aさんと女性Bさんが共有している土地(すべてに)とAさんが単独で所有している建物に同じ債権を担保する共同抵当権が設定されている場合。
この場合も設定者が違うので当事者が違うとも言えますが前述の(3)設定者所有者が異なる場合の一括抹消同様

一括抹消出来ます。

この場合の申請書は

目的 抵当権抹消(※特に「共同」の文言不要)
原因 平成〇年〇月〇日抹消
抹消すべき登記 平成〇年受付第〇号
権利者 東京都○○A
東京都○○ B
(以下略)

(2)一つは抵当権、もう一つは持分抵当権の場合の一括抹消

上の事例で土地に対する抵当権がBさんの持分のみに設定されている場合

この場合も前と同様一括抹消できます。

申請書は

目的 抵当権抹消(※特に「共同」の文言不要)
原因 平成〇年〇月〇日抹消
抹消すべき登記 平成〇年受付第〇号
権利者 東京都○○A
    東京都○○B
(以下略)

この場合抵当権抹消及びB持分抵当権抹消と登記の目的はなりそうですが、特に抵当権抹消のみで良い。